鮭を祀る町・村上|なぜ新潟には“鮭文化”がここまで残ったのか

こんにちは
シャケナベイベーナウ管理人です。

これまで数回に渡り、ブログで世界における鮭の文化を書いてきましたが、日本国内にも目を向けて、鮭に関する文化を書いていこうかな…と思います。

新潟県村上市。
江戸時代の城下町の風情が今も色濃く残る歴史ある街で、「鮭・酒・人情(さけ・さけ・なさけ)」の街として知られています。
出典:村上市観光情報発信基地

この町は、日本でも特別な“鮭の町”です。
もちろん、鮭が美味しいだけではありません。

村上には、「鮭を祀る文化」があります。

  • 鮭を神聖視する
  • 鮭へ感謝する
  • 一尾まるごと使い切る
  • 鮭を供養する

ここまで鮭文化が深い地域は、日本でもかなり珍しい。
なぜ、村上では、鮭がここまで特別な存在になったのでしょうか。

村上と鮭の歴史

村上を流れる「三面川(みおもてがわ)」は、古くから鮭の遡上で有名な川でした。
秋になると、大量の鮭が川へ戻ってくる。

これは昔の人々にとって、「自然からの贈り物」でした。

特に、雪国では、鮭は冬を越えるための重要食料。

つまり鮭は、「生活そのもの」だったのです。

世界でも珍しい“鮭の町”

現在でも村上は、「鮭の町」として知られています。

町には、鮭料理店、鮭加工店、鮭博物館、鮭関連神事が並びます。
さらに有名なのが、軒先に吊るされた大量の鮭。
冬になると、塩引き鮭が並ぶ光景は、村上の象徴です。

なぜ村上では鮭を祀るのか

理由は単純です。
鮭が、町を生かしてきたから。

昔の村上では、鮭が獲れるかどうかで、冬を越せるかが変わりました。
つまり鮭は、「命を支える魚」だったのです。

だから人々は、鮭に対して“感謝”を持つようになったのです。

「鮭は一尾まるごと使う」思想

村上の鮭文化で特に有名なのが、「鮭は捨てるところがない」という考え方。
身、皮、中骨、氷頭(ひず)、内臓、心臓、鼻軟骨まで利用します。

村上では、「100種類以上の鮭料理」があるとも言われています。

この文化は、単なる“もったいない精神”ではありません。
背景には、「命を無駄にしない」という思想があります。

つまり鮭は、ただの食材ではなく、「いただく存在」だったのです。

鮭供養と鮭信仰

村上周辺には、鮭への感謝や供養文化も残っています。
これは、北海道・東北の鮭信仰とも共通しています。

大量の命をいただくからこそ、感謝する、粗末にしない、無駄にしない必要がある。
つまり鮭は、「人格性を持つ存在」として扱われていたのです。

江戸時代、“鮭のシステム”を作った人物

村上の鮭文化で欠かせないのが、青砥武平治(あおと ぶへいじ)という人物。
江戸時代中期、越後国村上藩(現在の新潟県村上市)で、鮭が産卵しやすい環境を整え、世界初の鮭の自然保護増殖制度を考案しました。
これは現在、「種川の制」として知られています。

本流のほかに「種川」と呼ばれる人工のバイパス(分水路)を建設し、主に以下の施策を行いました。

環境の整備 川底に砂利を敷き詰め、サケが産卵しやすい環境を人為的に整えました。
入るサケの保護 種川に「ウライ」と呼ばれる柵を設け、入ってきたサケを囲い込んで安全に産卵させました。
禁漁期間の設定 サケの稚魚が海へと下る春の期間は、川での一切の漁を禁止しました。

簡単に言えば、「鮭を獲り尽くさず、来年も戻ってくる仕組みを作る」という考え方で、かなり先進的です。

出典:新潟文化物語 file-7 鮭の子、はらこ

実は“サステナブル漁業”だった

現代風に言えば、村上の鮭文化は、「サステナブル」です。

必要以上に獲らない、循環を守る、命を無駄にしない。
これは単なる伝統ではなく、「自然との共存技術」だったのです。

鮭は“帰ってくる魚”

鮭には、母川回帰(ぼせんかいき)があります。
つまり、生まれた川へ戻ってくる。

村上の人々は、毎年その姿を見てきました。
だから鮭は、「再び帰ってくる存在」として、特別視されたのです。

近年、民俗学や文化人類学では、「環北太平洋サケ文化圏」という考え方があります。

これは、北海道、サハリン、カムチャツカ、アラスカ、北海道、東北、新潟北部など、鮭文化を共有する地域を指します。
つまり村上も、「北太平洋鮭文明」の一部なんです。

現代でも鮭文化が生きている

村上では今でも、鮭文化が“観光用”で終わっていないこと。

普通に、鮭を吊るし、鮭を食べ、鮭を語り、鮭を敬う文化が残っています。
つまり村上では、鮭は今でも、「町そのもの」と言えるのかもしれません。

シャケナベイベー的に見る“村上”

鮭って、普通の魚じゃありません。
町を作り、文化を作り、思想を作っている。
つまり鮭は、「文明を作る魚」なんです。

村上は、そのことを今でも体現している町なのかもしれません。

まとめ

新潟県村上市には、鮭を神聖視する独特の文化があります。
背景には、三面川の鮭漁、北方文化、命への感謝、持続可能な漁業思想があります。

鮭は、ただ食べる魚ではない。

村上の人々は昔から、鮭を通して“自然との関係”そのものを見ていたのかもしれません。

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